四方山超特急

私は大学生。就活に生きる大学生。

ドラえもんのび太と雲の王国

アニメ・ドラえもんは毎年映画作品を公開する。

シリーズを通したテーマは1つである。

「少年よ、冒険をしよう。」

テレビアニメシリーズは悪く言うと平凡な毎日を繰り返す。閉じ込められた街の中で一話完結の物語が描かれる。

一方で、映画シリーズはドラえもんの道具で日常世界を抜け出すところからスタートする。

そして、映画が公開されるのは毎年決まって夏休みである。

せっかくの休み。学校を離れて、一生に一度の冒険から学び、楽しもう。というのが大テーマであることに違いない。違いないのである。

 

さて、ここで表題の傑作、「雲の王国」についてである。

ざっとストーリーを説明してしまうと、

① のび太ドラえもんの道具で雲の上に王国を建国する。

② 実際に雲の上で暮らしていた天上人に遭遇する。

③ 天上人は環境破壊を繰り返す地上人(我々のことである)を懲らしめるために、大規模なテロを計画する。

④ ドラえもん一行は雲を破壊する爆弾を盾に交渉を行うも決裂。クーデターにより、政権を奪われる。

⑤ 天上人による裁判で断罪されるも、のび太がかつて命を救った異星人により、情状酌量の余地が与えられる。

⑥ もう少し、もう少しだけ地上人の環境への取り組みを評価する時間を与えようじゃないか、という考えのもと、執行猶予が与えられる。

 

ドラえもん映画史上に残る展開の速さを誇る映画なのでまとめるのは困難ですが、ざっとこんな感じです。

 

この映画の珠玉な点につきましては、表テーマで「環境保護の大切さ」を説いているのに対し、裏テーマで「自己犠牲の精神」についても主要人物の非常にショッキングな行為を通して訴えていることです。そもそも、環境保護は消費国の我慢なくしては務まりません。この我慢は自己犠牲の精神にもつながるのです。そして、武田鉄矢が作詞したエンディングテーマでは、「誰かのためになるなら、冷たい雨に濡れてもいい」という言葉とともに、青い地球をバックにして映像が終了します。ここのカタルシス、半端ないです。

 

そして、④における雲破壊爆弾についてですが、まんま核爆弾です。ドラえもんは天上人に対し、「威嚇にしか使わない」ことを前提にしておきながら、結局、悪意ある人間によって使用されてしまいます。これは核による抑止力への質の高い皮肉になっているのではないでしょうか。

 

当作品は、説教要素の多いドラえもん映画の中でも特に説教臭い映画として賛否両論ですが、メッセージ性が強いために、解釈の余地も非常に高い傑作となっていります。

よろしくどうぞ